ともに汗を流してきた起業家たちとの10年【後編】

こんにちは! W ventures の服部@masahiro1985 )です。私のポリシーはNo investment, no life.(& no sauna. 笑)。意外と好評だった!?前編に続きまして、後編では出資させていただいた当時シード・アーリーステージで、その後IPOやM&Aでイグジットを経験されたり、BtoBtoCのSaaS領域で今まさに挑戦を続けていたり、直近でW venturesとして投資させていただいたスタートアップの方々にフォーカスしてみます! ぜひ今回も最後までご笑覧いただけたら嬉しいです!

 

【略歴】
・2010〜2018:SMBCベンチャーキャピタル
・2018〜2019:DNX Ventures
・2020〜:W ventures
 

骨太に有言実行を体現する起業家 〜 土屋尚史氏との出会い(グッドパッチ 代表取締役社長)

<2018年8月、グッドパッチ社にて土屋さんと>
 

まずはグッドパッチの土屋さん(@tsuchinao83)。2020年6月、東証マザーズに上場し、デザイン会社として日本初のIPOを果たした快挙は多くの方々にとってコロナ禍のネガティブなムードを吹き飛ばす明るいニュースでした。上場前の評価額を大幅に上回る株価にも多くの注目が集まりました。
 

土屋さんとは、2011年のグッドパッチ設立直後のタイミングにお会いしたのが始まりです。偶然見かけた取材記事をきっかけに、まずはすぐにオフィスを訪ねました。当時はまだ本当に「UI/UXデザインで日本にデザインの力を証明する!」という熱意だけがあるというフェーズで(笑)。オフィスは秋葉原のはずれにある町中華の5階に入居していて、「本当にここにインターネット企業のオフィスがあるのか?」と一抹の不安を覚えるような佇まいだったのがついこないだのことのようです。今の洗練されたオフィスからは想像もつかない、スタートアップ感に溢れていた時代ですね。
 

出会ってすぐのタイミングではファイナンスイベントがなかったものの、その後も定期的にやりとりを重ねて、2015年のシリーズAラウンドの資金調達で出資させていただく運びとなりました。僕は最初に秋葉原のオフィスでお話したときから「土屋さんに投資したい!」と決めていました。土屋さんを起業家としてひとことで表現するなら「骨太感」。UI/UXデザインで日本の社会を変え、クライアントの企業価値を高めることに挑戦していきたい、という情熱をまだサービスも何もない創業当時から燃やし続け、驚くほどの行動力でそれらを確実に実現させていきました。まさに有言実行。これからも応援しています!
 

<土屋氏コメント>
服部さんはグッドパッチの創業直後を知る数少ない投資家のひとりです。まだ数名しか社員がいない頃、秋葉原の小さなビルの一室にあったグッドパッチを服部さんは見つけて訪問してきました。当時は受託業務が事業の中心で、誰かから出資を受けることもIPOするなんてことも考えていなかったので、VCと面談する機会もほとんどありませんでした。しかし、その時期から服部さんはグッドパッチのオフィスが移転するたびにオフィスへ遊びに来てくれて、最初のオフィスからグッドパッチを追い続けてくれた投資家はほかにいなかったので、その姿勢に「人として信用できる」と思い、シリーズBラウンドでの資金調達時に服部さんへ出資のお願いをしました。服部さんの良い所は、出会った当時銀行系VCという比較的堅めの組織に所属していたにも関わらず、決して偉ぶることなく多くの若手スタートアップ経営者と同じ目線に立ってフラットな関係で接していて、現在もその姿勢が変わらないという点です。そういった部分が服部さんの投資家としての好感度や信頼につながってきたのだと感じています。多くのスタートアップの創業期に立ち会い、今をときめく起業家たちを発掘してきた服部さんの目は本物だと思います。これからも服部さんがどんなスタートアップを発掘していくのか楽しみにしています!

 

信念を貫く起業家であり戦友 〜 原田大作氏との出会い(ザワット創業者 / メルカリグループ経営戦略室Director)

<左から、アオイゼミ石井さん、スマービー遠藤さん、僕、原田さん →2018年1月。M&AでExitを果たした服部の投資先3社の起業家メンバーとのグループです。通称“2回目の起業の際も出資お願いします会”(仮)>

 

続いては、ザワット創業者の原田さん(@Ginsaku)です。2012年7月、プレシリーズAラウンドで出資させていただき、2017年2月にはメルカリ初のM&Aとして、発行済全株式を売却しメルカリグループ入り。原田さんはメルカリの新規事業責任者を経て現在はグループ全体の経営戦略室Directorとして活躍されています。
 

M&A発表当時、原田さんが開発・運営していたフリマアプリ『スマオク』は、元々はFacebook APIを活用したCtoCクラシファイドサービス『WishScope』からピボットして誕生したサービスでした。僕が出会った頃は、まだ『WishScope』のiOSアプリが完成したばかりでマネタイズ開始前の段階。当時、所属していた銀行系VCがC向けのマネタイズフェーズ前段階で出資することは基本的にハードルが高く、リーマンショックの傷跡を引きずっていた市場環境では今よりもさらに難しい状況でした。しかし、そんななかでも『WishScope』には日本版Craigslistの可能性を信じて、他のVCに先駆けて投資意思決定をさせていただきました。
 

その後、プロダクトのコンセプト転換、ピボット、組織開発、資金調達かM&Aかの検討など、さまざまな局面で難しい意思決定と向き合ってきた原田さん。そういった時期に、伴走しサポートさせていただけたことは、まだキャピタリストとして駆け出しだった当時の僕にとって、とても多くの学びの機会であり貴重な経験となりました。原田さんの強みは、信念を曲げることなく自分の信じた道を最後まで突き進むところです。時には僕たちVCと難しいコミュニケーションを取らなければならないことや、日々多くの問題が起き決して平坦ではない日々のスタートアップ経営でも、共同創業者の鈴木さんと山本さんという素晴らしい仲間と支え合いながら、Exitまでたどり着くことができたのだと思います。今後いつか2度目の挑戦をされる際には、ぜひまた絶対に支援させていただきたいと思っています!
 

<原田氏コメント>
服部さんはとても人情味があり、最後まで起業家を信じて並走してくれた投資家です。例えば、議論が白熱するような取締役会があった後に「僕はザワットを応援しますよ!」と、そっと声をかけて励ましてくれる、そんな優しい男です。また、提携先や営業先を自ら手を動かしてサポートいただいたことも多々あり、現場での泥臭い仕事も一緒に進めてくれるという、事業好きな面もあります。また機会があれば一緒に仕事したい!そう思える戦友です。

 

大胆さと緻密さのあいだ 〜谷口優氏との出会い(TableCheck 代表取締役社長CEO)

<左から、TableCheck 谷口さん、僕、八面六臂 松田さん、クックビズ 藪ノさん → 2018年3月。服部投資先のフードテック3社の代表メンバーとの会。いずれも服部が資金調達ラウンドでリード投資を実行した3社です。同じ業界だが領域が異なるため連携し3社でコミュニケーションを深めていけたらと思い、服部が企画したもの。今でも4人で集まり親交を深めています>
 

TableCheck谷口さんとの出会いは、2015年。飲食店の紙台帳をオンラインに置き換え、即時予約を実現している『TalbeCheck(旧VESPER)』は、当時から着眼点がユニークかつ機能性・利便性に優れていることに加えて、すでに積み重ねつつあった実績とグローバルを見据えた事業展開にスケールの大きさを感じて注目をしてきました。2017年にシリーズBラウンドとして単独で1.5億円、2019年にはシリーズCラウンドで5億円のリード出資をさせていただきました。その後も順調にグロースを続け、いまでは世界26カ国・地域の約7300店舗の飲食店に利用され、さらにtoB領域からtoC領域へと事業拡大するなど、今後の成長がますます楽しみな一社です。
 

出会った初日から印象に残っているのが「キャッシュがなくなってきた時の方が起業家としてアドレナリンが出る。暗いトンネルでもいつか必ず明かりは差すからアクセルを踏みたくなる」という、なんともエキセントリックさを感じさせる谷口さんの言葉です。また、その一方で、谷口さんの投資検討資料は想いや今後の構想が伝わりやすく細部まで完成度が高いことからもわかるのですが、持ち前の大胆さに加えて緻密さも持ち合わせているのが谷口さんの起業家としての強みだと思います。
 

シリーズB・Cラウンドでの投資は、僕自身としても所属先VCをまたいでの投資となり、トータルの投資金額も個人的に最高額となったことから、今でも特に思い入れのある案件のひとつです。飲食業界をはじめとする既存のリアル産業が抱える課題は根深いケースが少なくないと思うのですが、だからこそスタートアップがテクノロジーを取り入れて根本的な解決に取り組むことが社会から求められているようにも感じています。谷口さんとは投資後も、カード決済の事業会社との大型アライアンスや大手ホテルブランドへの法人営業といった場面でも、訪問先でのやりとりも含めてサポートをさせていただいてきました。ここぞというところで、資金面だけでなく僕たちVCの繋がりや経験も含めて存分に活用することで打ち手を磨くというのも、起業家として欠かせない資質なのだな、と谷口さんの経営姿勢を通して再確認することができました。
 

<谷口氏コメント>
とにかく熱い、男気溢れる服部さん。良きビジネスパートナーであり、友人でもあり、公私ともにお付き合いを続けています。SMBCベンチャーキャピタルから異例の金額と単独出資を実現させ、その後もさらに追加投資いただくなど、資金調達を通して経営面でも深く信頼しています。服部さんは人として本当に裏表のなく、起業家が腹を割って何でも相談できる投資家です。器も大きく、多少クレイジーなことでも笑ってくれる寛容さもあり、個人的にはこれ以上ないと思えるくらい心強い存在です。今後ともよろしくお願いします!

 

伸びしろ♾! 〜山本義仁氏との出会い(ガレージバンク 代表取締役CEO)

<左から、僕、ガレージバンク 山本さん、同社 磯田さん>
 

ガレージバンク山本さんとの出会いのきっかけは、僕がSMBCベンチャーキャピタル在籍時に同じSMBCの法人営業担当として、山本さんからスタートアップの資金調達の相談を受けたことでした。僕たちは元々は同僚でした。ガレージバンクは2020年1月に設立されたスタートアップで、「モノの価値を、みんなの力に」というミッションのもと、モノの価値を活用したファイナンスを実現する、C向けセールアンドリースバックサービス『CASHARi / カシャリ』を開発・運営しています。
 

僕はSMBC時代に知り合った当初から、慶應SFC出身でテクノロジーに強いという素質に加えて、スタートアップマインドを山本さんに感じていて、冗談で「起業したら?」とよく言っていました(笑)。その後、お互いにSMBCから転職して、山本さんはスタートアップを経て起業。僕がちょうどW venturesに参画したタイミングで、起業家として一番に相談を持ちかけてくれました。「山本さんが起業するなら応援したい」と以前から思っていたのと、事業計画を聞いて“質屋のDX”というマーケットへの着眼点とその考え抜かれたビジネスモデルが決め手となり、その場でシードラウンドでの出資を決めさせていただきました。
 

山本さんは、メガバンク出身で、スタートアップでの金融事業立ち上げという『CASHARi / カシャリ』に相応しいバックグラウンドの持ち主で、数字とリスク管理能力にも長け、良い意味でのしたたかさを持ちながら周囲の人々にも愛されて熱量の高いチームを作れる経営者であると感じています。質屋の経営経験がある共同創業者の磯田さんとの経営チームは金融・質屋・ITのバランスがよく、投資後およそ半年ほどでプロダクト開発に取り組み、昨年11月末に『CASHARi / カシャリ』β版をリリースしています。ガレージバンク社が実現しようとしている“モノの価値”の変革は、これからの時代のニーズに応えて新たな“あたりまえ”の存在になっていくでしょう。これからメンバーを増やし、本格的なグロースフェーズに入るかと思います。CtoCプラットフォームの新たなカテゴリ開拓、引き続き応援しています!
 

<山本氏コメント>
服部先輩(笑)、との出会いは7年ほど前になるかと思います。SMBC時代、仕事を通してその圧倒的なスピード感と起業家に対する真摯な姿勢にとても惹かれ、転職後もいつかまたどこかでご縁があったらいいなと思っていました。当時はまさか自分自身が起業するとは思っていませんでしたが……! その後、『CASHARi / カシャリ』の事業モデルを構想した段階で、デモプロダクトを一番最初に見ていただいたのが服部さんでした。まさかプレゼンをしたその場で出資をコミットいただけるとは思っていなかったので、その意思決定のスピード感に改めて驚いたのと同時に、とても嬉しく感じました。まもなく出資いただいてから丸一年が経ちますが、服部さんとは妻や共同創業者と同じくらいの頻度で日々コミュニケーションを重ねているような気がしています。真摯に起業家と向き合い、サポートを惜しまないその姿に、出会った頃よりもより一層惹かれています。……なんだかラブレターみたいになりましたが、これからもよろしくお願いいたします!また私の家でとことん飲み明かしましょう!
 

まとめ

ご協力いただいた投資先企業のみなさまありがとうございました。とても個人的なことではあるのですが、35歳も折り返しで気がつけばキャピタリストとして11年目が終わろうとしている今、起業家のみなさんや投資家の諸先輩方との出会いを通して重ねてきた数々の経験のおかげでここまでやってこれたと改めて感じています。
 

今回、前編と後編の2部構成で、僕自身のベンチャーキャピタリストとしてのキャリアを振り返らせていただきました。昔も今も大切にしているのは、企業規模の大小を問わず一つひとつの出会いと誠実に向き合い、リスクを恐れずゼロから会社を興すという決断をされた起業家を晴れの日も雨の日もリスペクトするということです。12年目を迎えようとしていてもなお、まだまだ半人前な点があり学ぶべきことだらけの日々ですが、すべての起業家との出会いがあってここまでやってくることができました。心から感謝しています。
 

ベンチャーキャピタリストと一口に言っても、人によって考え方・価値観・投資スタンスなどさまざまです。そこに正解はないと思っています。僕は僕なりに引き続き自分の気持ちを大切に、これからも起業家のみなさんとの信頼関係を信じて投資活動に取り組んでいけたらと考えています。これから起業される方、資金調達を検討している方、ぜひお気軽に服部までご連絡ください!
 

また、今回も取り上げさせていただいたのは投資先のなかでもほんの一部のみなさまなので……!「おいおい服部!まだ声がかかってないぞ!?」という方や「我こそは……!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ今後ご紹介させてください! Twitterなどでシェアいただけたらご要望を踏まえてシリーズ化も本格的に検討したいと思ってます!笑

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